横坂杜氏がきました!

短く切り揃えられた髪、シワのほとんどないきれいな肌に屈託のないえびす顔(蛭子さんに似ているというわけではない)、体操選手を思わせる肩幅と筋肉質の腕、仕事の話・酒の話をしだすともう止まらない・・・そんな横坂杜氏が当店に来てくれた。


杜氏というのは単に酒造りの専門家のことを指す呼称だ・・・と、私は思っていない。

普通の人間ではないと思っている。

科学者や数学者、偉大な音楽家・芸術家、あるいは囲碁や将棋の棋士など選ばれた人間だけが就く職業、杜氏とはそういった職業のひとつであり、酒造りの現場を知るようになって以来、私は杜氏にお会いすると必ず畏怖畏敬の念が起こるの感じてきた。


さて横坂杜氏、酒造りに携わって35年だという。その間、新潟、関西、関東と蔵を渡り歩き、現在銘酒「不老泉」の滋賀・上原酒造で杜氏をされている。


「絞って出てくる酒には自分のすべてがつまっている」と横坂杜氏は言う。


横坂杜氏は数年前から千葉で「総の舞」という酒米もつくっていて、まさに文字通り、一年中酒造りに自分のすべてを投入している。そして今年も自らの手で手塩にかけて育てた「総の舞」を携えて蔵入りし、35年の経験のすべてを酒造りに投入する。


選ばれた人間が愛し熱中する酒づくり。横坂杜氏の、選ばれる人間になるべく個人の能力をひたすら高めてきた生き方には、畏怖畏敬に加えてロマンさえ感じさせる。人間として最高の生き方を生きていることを感じさせる。


そんな造り手に思いを馳せながらお酒を味わう、というのはあまりにロマンティシズムに浸りすぎだろうか。精神的過ぎるだろうか。


だけど工業製品のように造られたお酒と、選ばれた人間が醸すお酒との違いが「ロマン」があるかどうかだとしたら、精神を備えた人間が飲むからこそその違いを感じ取れるのではないだろうか。少なくとも当店のお客様は「違いがわかる」お客様たちだと思います。